ブリキの製造工程について

ブリキの製造工程について

 

ブリキの製造工程を完全解説|原料から完成品まで4ステップでわかる

ブリキは、薄い鋼板の表面に錫(スズ)を薄くコーティングした金属素材で、飲料缶・食品缶・雑貨缶など私たちの生活の至る所で使われています。その独特の光沢と優れた耐食性、加工しやすい特性から、現代においても缶容器の主要素材として世界中で生産されています。本記事では、ブリキが完成するまでの製造工程を「原料の準備 → 圧延 → 錫めっき → 検査・仕上げ」という4つのステップに分けてわかりやすく解説します。ブリキ缶の素材への理解を深めたい方、容器選定を検討している方に役立つ情報をお届けします。

目次

  1. ブリキとはどのような素材か
  2. ブリキの主な原料
      2-1. 鋼板(スチール)
      2-2. 錫(スズ)とその産地
  3. ブリキの製造工程4ステップ
      3-1. ステップ1:原料の準備
      3-2. ステップ2:圧延(冷間圧延)
      3-3. ステップ3:錫めっき(電気めっきと溶融めっき)
      3-4. ステップ4:検査・仕上げ
  4. 製缶工程:ブリキ板からブリキ缶になるまで
  5. ブリキの主な特長と用途
  6. まとめ

ブリキとはどのような素材か

ブリキ(英語:tinplate)は、薄い鋼板の両面に錫(スズ)を数マイクロメートルの薄さでコーティングした複合金属材料です。「ブリキ」という名称はオランダ語の「blik」に由来し、江戸時代に日本へ伝わりました。

ブリキの最大の特徴は、鉄の強度と錫の耐食性・衛生性をあわせ持つ点にあります。錫は単体では柔らかく缶容器には向きませんが、鋼板にコーティングすることで、錆びにくく食品を安全に保存できる素材へと変わります。

なぜ錫(スズ)がコーティング素材として選ばれるのか

錫がブリキのコーティング素材として選ばれる理由は主に3つあります。

  • 耐食性:酸・塩分・湿気に対して高い耐性を持ち、内容物や外部環境から鋼板を守ります。
  • 食品安全性:錫は食品衛生法上、安全な素材として認められており、飲食物を保管する缶に適しています。
  • 加工性:薄い錫の膜は延性・展性に優れており、缶の形に加工する際に割れたり剥がれたりしにくい特性があります。
ブリキ製造工程

ブリキの主な原料

鋼板(スチール)

ブリキの基材となる鋼板は、鉄鉱石と石炭(コークス)を原料として製鉄所で製造されます。ブリキ用には、缶として加工しやすいよう特に薄く仕上げた冷延鋼板が使用されます。厚さは用途によって異なりますが、一般的に0.15〜0.50mm程度という薄さです。この均一な薄さを実現するために、後述する圧延工程が重要な役割を担います。

錫(スズ)とその産地

錫は、錫鉱石(主にカッサイト石)から精錬して得られる銀白色の金属です。世界の錫鉱石生産量は、中国・インドネシア・ミャンマーの3カ国で全体の約76%を占めています。日本国内でも鹿児島県・大分県などで産出実績があります。

ブリキ製造に使用される錫の量は、鋼板1m²あたりわずか数グラムと非常に少量ですが、均一にコーティングされることで高い耐食性を発揮します。この薄さと均一性のコントロールが、製造技術の核心のひとつです。

ブリキの製造工程4ステップ

ブリキの製造は、以下の4工程で構成されています。

ステップ 工程名 主な作業内容
1 原料の準備 鋼板・錫の調達・酸洗・前処理
2 圧延 冷間圧延による薄延ばし・切断
3 錫めっき 電気めっきまたは溶融めっきによる錫コーティング
4 検査・仕上げ 品質検査・表面化成処理・印刷・塗装

ステップ1:原料の準備

鋼板と錫を製鉄所・精錬所からそれぞれ調達します。この段階では、鋼板の表面に付着した油分や酸化膜(さび)を除去する「酸洗(さんせん)」と呼ばれる前処理が非常に重要です。塩酸や硫酸を用いた酸洗によって表面を清浄化することで、次工程の圧延・めっきの品質を大幅に向上させることができます。前処理の精度が、最終製品の品質を左右するといっても過言ではありません。

ステップ2:圧延(冷間圧延)

前処理を終えた鋼板は、複数対のロールで挟み込んで薄く延ばす「圧延」工程に入ります。ブリキ製造では一般的に冷間圧延(常温で圧延する方法)が採用されます。

冷間圧延が選ばれる理由は以下の通りです。

  • 熱間圧延と比べて寸法精度が高く、均一な厚みを得やすい
  • 表面が滑らかに仕上がり、後のめっきや印刷の品質が向上する
  • 加工硬化により強度・硬さが上がり、薄くても丈夫な鋼板が得られる

圧延の回数や荷重条件を細かく調整することで、最終製品のブリキの厚みや硬度・引張強度が精密にコントロールされます。圧延後は、次工程で扱いやすいサイズに切断されます。

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ブリキ工場の様子

ステップ3:錫めっき(電気めっきと溶融めっき)

圧延された薄い鋼板の表面に錫をコーティングする、ブリキ製造の核心工程です。この工程によって、鋼板が初めて「ブリキ」へと変わります。現代の製造では主に電気めっきが採用されていますが、用途によっては溶融めっきも使われます。

電気めっきの流れ

  1. 鋼板を電解槽(錫イオンを溶かした溶液)に通す
  2. 電気を流すことで、鋼板の表面に錫を均一に析出させる
  3. めっき後、加熱処理(リフロー処理)を行い錫を溶かして密着性を高める

電気めっきは錫の付着量を精密にコントロールできるため、原料コストを抑えながら均一な品質が得られます。一方、かつて主流だった溶融めっき(溶けた錫の槽に鋼板を浸す方法)は比較的厚い錫層が形成され、現在も一部の用途で採用されています。

比較項目 電気めっき 溶融めっき
錫層の厚み 薄く均一にコントロール可能 やや厚め
精度 高い やや劣る
主な用途 飲料缶・食品缶全般 特殊用途
現在の主流か ◎ 主流 △ 一部用途のみ

ステップ4:検査・仕上げ

めっきが完了したブリキは、専用の検査装置によって品質が厳格にチェックされます。主な検査項目は以下の通りです。

  • 錫付着量の均一性:コーティングが均等に施されているか
  • ピンホール(微細な穴)の有無:耐食性を損なう欠陥がないか
  • 表面の平滑性:傷や凸凹がないか
  • 板厚・寸法精度:規格通りの厚みと幅になっているか

検査に合格したブリキは仕上げ工程へ進み、表面の化成処理(保護膜の形成)、印刷、塗装などが施されます。これによって、缶としての意匠性と機能性がさらに高められます。

製缶工程:ブリキ板からブリキ缶になるまで

製造されたブリキ板は製缶メーカーの工場へ運ばれ、以下の工程で私たちが手にする缶製品へと加工されます。

  1. ブランキング(打ち抜き):ブリキ板から缶の胴・底・蓋の形に打ち抜く
  2. 成形(プレス・曲げ加工):打ち抜いたパーツを缶の形に成形する
  3. 溶接・接合:胴部の端同士を接合して筒状にする
  4. フランジ加工・シーミング:胴・底・蓋をかしめて密閉する
  5. 充填・密封:内容物を充填し、最終密封する

これらすべての工程を経てはじめて、店頭に並ぶ飲料缶・食品缶・雑貨缶が完成します。ブリキという素材の品質が高ければ高いほど、この製缶工程での不良率も下がり、最終製品の信頼性につながります。

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ブリキの主な特長と用途

ブリキが長年にわたって多くの分野で使い続けられている背景には、素材としての複合的な優秀さがあります。

特長 詳細
耐食性 錫コーティングが鋼板を酸・湿気・塩分から保護
食品安全性 食品衛生法上、安全な素材として認定
印刷・塗装適性 表面が平滑なため、鮮やかな印刷やクリアな塗装が可能
加工性 溶接・プレス・曲げ加工がしやすく、複雑な形状にも対応
リサイクル性 スチールは磁力で分別しやすく、リサイクル率が高い
光沢と美観 独特のメタリック光沢があり、高級感・清潔感を演出

ブリキの主な用途は、食品缶・飲料缶・缶詰・オイル缶・塗料缶のほか、化粧品容器・ギフト缶・ノベルティグッズなど多岐にわたります。近年では環境意識の高まりとともにプラスチック代替素材としての需要も増加しており、ブリキの活躍の場はさらに広がっています。

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まとめ

ブリキの製造は、①原料の準備・②圧延・③錫めっき・④検査・仕上げという4つの主要工程によって成り立っています。それぞれの工程で高度な技術と厳密な品質管理が行われることで、耐食性・食品安全性・加工性に優れたブリキが完成します。さらに製缶工程を経て、飲料缶・食品缶・雑貨缶など私たちの生活に欠かせない製品として仕上げられます。製造技術は常に進化しており、電気めっきの高精度化や錫使用量の削減、リサイクル性の向上など、環境配慮の取り組みも続いています。ブリキという素材の奥深さを知ることが、より良い缶容器選びの第一歩になるはずです。

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